2016-08-06

日英同盟を軽んじて日本は孤立/『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯


『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義 vs 多極主義』北野幸伯
『隷属国家 日本の岐路 今度は中国の天領になるのか?』北野幸伯
・『プーチン 最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?』北野幸伯

 ・日英同盟を軽んじて日本は孤立

『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理』北野幸伯
菅沼光弘

 第一次世界大戦が始まる時、日本とイギリスは同盟国、イギリスとアメリカは同盟国ではありません。
 つまり、日本とイギリスのほうが、米英よりも近い関係にあった。
 しかし、第一次世界大戦の態度の違いにより、日英関係は冷え込み、米英は「もっとも重要な同盟国」になってしまいます。
「味方が苦しんでいるのを見捨てた」日本の「武士」らしからぬ行動は、すぐに悪い結果となって現れてきました。
 米英は、日本を強く警戒するようになり、以後「日本の力を削ぐ」ことが重要な目標になっていきます。
【1921年、日英同盟破棄が決定】されました。
 1922年に締結された「ワシントン海軍軍縮条約」で、日本の戦艦保有は、米英の6割と定められました。
 日本は7割を主張しましたが、米英は一体化して、これを拒否しています。
【1923年、日英同盟が失効。】
 このように、【日本の孤立は、第一次世界大戦時、日英同盟を軽んじたところから始まった】のです。

【『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯〈きたの・よしのり〉(集英社インターナショナル、2013年)】

 改行まみれである(笑)。女子中学生の日記みたいだ。ロシアで失脚したプーチンが日本に柔道留学する。日本の無能な政治家がプーチンにアドバイスを求める。つまりプーチンであればどのような日本の舵取りをするか、とのテーマで国家としての自立を示す内容となっている。

 ヨーロッパ列強の中で「栄光ある孤立」を貫いてきた大英帝国が翳(かげ)りを帯びた。日英同盟は大英帝国の覇権が弱まったことを意味した。

 同盟の直接的なきっかけとなったのは義和団の乱(1900年)であり、柴五郎とジョージ・アーネスト・モリソンの邂逅(かいこう)が両国を結ぶに至った(『ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書』石光真人、『北京燃ゆ 義和団事変とモリソン』ウッドハウス瑛子)。そしてモリソンは日本とロシアを戦争にまで誘導する(『日露戦争を演出した男 モリソン』ウッドハウス瑛子)。

 日英同盟破棄には伏線があった。第一次世界大戦後にパリ講和会議で日本による人種的差別撤廃提案が否決されたことである(1919年)。

白人による人種差別/『国民の歴史』西尾幹二

 19世紀末から日本が歩んだ半世紀を振り返ってみよう。

(1868年 明治元年
 1894-95年 日清戦争
 1896年- 欧米豪で黄禍論が台頭  1900年 義和団の乱
 1902年 第一次日英同盟
 1904-05 日露戦争
 1905年 第二次日英同盟
 1911年 第三次日英同盟
 1921-22年 ワシントン海軍軍縮条約  1921年 四カ国条約  1931年 満州事変
 1933年 日本が国際連盟を脱退
 1937年 支那事変
 1941-45年 太平洋戦争(日本は支那事変を含めて大東亜戦争と称した)

 武士が刀を置き、チョンマゲを落として(散髪脱刀令 明治4年/1871年)からわずか23年で戦争に突入した。日本の近代化は文字通り戦争の歴史であった。

 幕末の知識人は阿片戦争(1840-42年)に衝撃を受けた。幕府は外国船に対して宥和政策を執らざるを得なくなった。そこに黒船が来航(1853年)する。迫りくる帝国主義に対する国家改造が明治維新であった。日本が遅れて帝国主義の波に乗ろうとした。だが当時の世界はそれを許さなかった。

 戦後の日本は安全保障を米軍に肩代わりさせて、まんまと経済発展を遂げた。辛うじて国体は護持したものの国家観を見失った。GHQの占領期間が終わっても尚、自国の歴史を教えることがなかった。日教組の教員は堂々と国旗掲揚を非難し、君が代斉唱を拒んだ。義務教育では戦前を暗黒史として教えた。マルクス史観を貫く進歩というテーマのために古い時代は悲惨と位置づけられた。


 日本の領土問題は北方領土竹島尖閣諸島の三つである。GHQが意図的に島嶼(とうしょ)部の扱いを曖昧にして混乱要因を残したという説もある。そして中国・ロシアが領空・領海を日常的に侵犯している。こうした状況にありながら平和憲法にしがみつくのは一種の教条主義であろう。日本の安全を保障してきたのは憲法第9条ではなくアメリカの核の傘であった。理想を見つめるあまり脅威を無視できる人々が多いことに暗澹(あんたん)たる思いがする。彼らにとってはチベットやパレスチナは他人事なのだろう。

 1990年代にようやく自虐史観を乗り越える動きが始まり、東日本大震災を通して尊皇の気風が回復しつつある。

 しかし、被災地で、また避難先で、今日もなお多くの人が苦難の生活を続けています。特に、年々高齢化していく被災者を始めとし、私どもの関心の届かぬ所で、いまだ人知れず苦しんでいる人も多くいるのではないかと心に掛かります。
 困難の中にいる人々一人ひとりが取り残されることなく、一日も早く普通の生活を取り戻すことができるよう、これからも国民が心を一つにして寄り添っていくことが大切と思います。

東日本大震災5年 追悼式の天皇陛下お言葉全文 2016年3月11日

 このお言葉を政治家は真剣に受け止めているだろうか? 右も左も関係ない。幕末にあって攘夷派も開国派も尊皇という一点は共通していた。日本が世界最古の国(【ギネス認定】日本は世界最古の国)たり得たのは天皇陛下の存在があったからだ。天皇という国家の軸を失えば「日本はなくなって、その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済大国が極東の一角に残るのであろう」(「果たし得ていない約束」三島由紀夫/サンケイ新聞 昭和45年7月7日付夕刊)という三島の予言が現実のものとなる。

日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら

2016-08-03

ジョン・D・バロウ、他


 4冊挫折、1冊読了。

ブッダの脳 心と脳を変え人生を変える実践的瞑想の科学』リック・ハンソン、リチャード・メンディウス:菅靖彦訳(草思社、2011年)/狙いはいいのだが力及ばずといったところ。半分ほど読んだが自我を肯定しているため心理学レベルの療法にとどまっている。それでも新しい表現があって参考にはなる。

がんが自然に治る生き方 余命宣告から「劇的な寛解」に至った人たちが実践している9つのこと』ケリー・ターナー:長田美穂訳(プレジデント社、2014年)/キレとコクを欠く。悪い本ではない。

千日の瑠璃 究極版(上)』丸山健二(求龍堂、2014年)/厳密に比較したわけではないのだが文章が長くなっているように感じた。「究極版」との尊大なタイトルの割には冗長さしか感じない。しかも旧版はウェブ上で公開されており、わざわざ改行を増やして2000ページにした意味が不明だ。巻末に加えられた詩的な文章もかつての丸山と比べると澱みがある。求龍堂からは古い作品が陸続と増刷され、眞人堂では「丸山健二文学賞」なるものまでできた。古いファンからすれば、やや不思議なスポンサーシップである。丸山が強気なのはこうしたパトロンの存在もあるのだろう。個人的に『千日の瑠璃』は好きな作品なのだが、多くのファンからは見限られた。究極版とはいうものの文章に誤りがある。

科学vs.キリスト教 世界史の転換』岡崎勝世〈おかざき・かつよ〉(講談社現代新書、2013年)/三部作の最終章。読み物としての山場に欠ける。機会があれば読み直すつもりである。

 114冊目『宇宙が始まるとき』ジョン・D・バロウ:松田卓也訳(草思社、1996年)/「ジョン・バロウ」と表記されているが多分『無の本 ゼロ、真空、宇宙の起源』と同じ著者だろう。“なお、訳書の名義は「ジョン・D・バロウ」、「ジョン・バロウ」、「J.D.バロー」など、出版社ごとに異なる”(Wikipedia)。出だしは易しいのだが、あっという間に難解な領域に踏み込む。その手並みが鮮やか。松田の訳もこなれていておすすめ。時間論と人間原理についての言及もある。

世界は「アメリカ幕末時代」に突入した/『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義 vs 多極主義』北野幸伯


 ・世界は「アメリカ幕末時代」に突入した

『隷属国家 日本の岐路 今度は中国の天領になるのか?』北野幸伯
『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯
『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理』北野幸伯
菅沼光弘

「世界は【アメリカ幕末時代】に突入した」

【『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義 vs 多極主義』北野幸伯〈きたの・よしのり〉(草思社、2007年)以下同】

 電子書籍配信サイトの連載を単行本化した作品である。書き手にとっては巧いやり方だと思う。一粒で二度おいしいわけだ。文化を支えるのは活字と音楽だ。不況の波が恐ろしいのは文化発信者の数を激減させることである。ミュージシャンもこうした手法を取り入れるべきだろう。文筆家はフリーの編集者を確保するのが賢明だと思う。

 北野幸伯〈きたの・よしのり〉の著作はインテリジェンス入門としてうってつけである。文章がわかりやすく、話題も広い。引用文献もあまり知られていない好著が多い。内容の重複が目立つが、きちんとバージョンアップしている。今のところハズレなし。

 インターネット社会の作法としてインテリジェンス能力は欠かせない。情報を読み解く力が弱いとデマを信じ込んでしまう。安倍政権に対する批判が広がりを持てないのは、左翼の古ぼけた眼鏡を通した価値観に基づくためだ。日本の近代史を上書き更新した上で、利権構造や官僚システム、天下りの放置などに斬り込む必要があるだろう。

「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」(テレビ演説 2013年9月10日)という歴史的なひと言が「アメリカ幕末時代」の幕を開いた。これから訪れるのは「混乱」である。日本における明治維新は「尊皇」の精神で一つにまとまることができた。しかし世界に天皇陛下は存在しない。ということは際限のない三国志のような時代が来る可能性もある。

 世界情勢をじっくり観察してみると、【アメリカの影響力は衰退の一途をたどっている】ことがわかるのです。

 特にオバマ政権下での国防予算削減が大きい。沖縄から米軍が撤収する時期もそう遠くはないことだろう。憲法改正の動きにはそうした背景がある。

 世界情勢を理解するためにはいくつかのファクターを知る必要があると書きました。それはいったい何でしょうか?
【第一に「国家のライフサイクル」】
 これは、ある国が今上向きなのか下向きなのかを知る方法。これは人的要素と関係ない変えられない流れです。
【第二に「国際関係の主役と準主役の動き」】
 世界情勢を理解するためには、全部の国の動向を知る必要はありません。数カ国の動きだけで十分です。
【第三に「ある国の動きを決める国益」】
【第四に「指導者」】
【第五に「通貨と資源」】
 これだけわかれば世界のことは手にとるようにわかるようになります。

 これは一貫して北野が著作で主張している。一つだけ付言しておくと、「国家のライフサイクル」とは仏教語でいうところの生老病死・成住壊空(じょうじゅうえくう)である。永遠に発展する国家はない。アレクサンドロス大王(紀元前356-紀元前323年)の栄華は1代で終わった。モンゴル帝国は200年足らずで衰退を免れなかった。ナポレオン・ボナパルト(1769-1821年)は10年で失脚した。栄枯盛衰は摂理のように見える。

 そして日本のライフサイクルは下降しつつある。アメリカの軍事力を頼ることができなければ自前で調達するしかない。今まで米軍に与え続けてきた思いやり予算と、これからの防衛費がバランスできるのかどうか? 「日米安保は安かったな」と自覚するような日が来れば、社会保障はとっくに切り捨てられていることだろう。

中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日―一極主義 vs 多極主義

2016-08-01

情報ピラミッド/『隷属国家 日本の岐路 今度は中国の天領になるのか?』北野幸伯


『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義 vs 多極主義』北野幸伯

 ・情報ピラミッド

『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯
『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理』北野幸伯
菅沼光弘

 実はこの世界には、いくつかの情報ピラミッドがあります。
 米英ピラミッド・欧州ピラミッド・中国ピラミッド・イスラムピラミッド・ロシアピラミッド等々。ピラミッドが違うと、同じ事件に対する見解が全く異なるのです。
 皆さんご存知ないかもしれませんが、日本は米英情報ピラミッドの下流にあります。
 日本にはもちろん報道の自由があります。しかし、その解釈はどうしても、米英ピラミッドの外に出ることはないのです。これは、いくらCNNを見ても、英字新聞を熟読しても同じこと。
 ロシアピラミッドの否定的な面は、あまりどっぷりつかりすぎると、クレムリンに洗脳されてしまうこと。肯定的な面は、ロシアピラミッドには、世界を支配する米英のネガティブ面について報道規制が全くないということです。
 これらの要因で、私は自然と多角的に物事を見るようになりました。そしてわかったことは、「政治経済というのは、【案外因果関係がはっきりしている】」ということでした。

【『隷属国家 日本の岐路 今度は中国の天領になるのか?』北野幸伯〈きたの・よしのり〉(ダイヤモンド社、2008年)】

「イスラムが行うとテロで、アメリカが行えばテロと呼ばれないのはおかしい」と武田邦彦が指摘するのも、米英ピラミッドを疑えというメッセージなのだろう。所属・帰属が情報を大幅に制限する。

 特に政治性や宗教性は人間の脳を束縛する。洗脳とは「ブレイン・ウォッシュ」の訳語であるが、洗われ、漂白された脳が特定の色に「染め上げられる」。完璧な洗脳は他人からの支配を自分の意志と錯覚させる。

 監禁・睡眠不足・暴力を伴う洗脳をソフトにしたものがマインドコントロールである。マインドコントロールはカルト宗教やマルチ商法の専売特許ではない。操作性という意図がマインドコントロールの本質である。教育は親子であろうと学校であろうと子供を自由にするためではなく、隷従させるために行われる。大人の指示・命令に子供が従う時、我々は「お利口だね」と言う。聞き分けのよいことが賢いこととされるのだ。褒められるという報酬によって子供は更なる隷従へ向かう。

 古来から伝わる神話には健全な社会秩序形成という目的があったと考えられるが、メディアのマス化(新聞・ラジオ・テレビ)以降は操作性が強くなる。社会主義国ではプロパガンダに進化し、資本主義国では広告に発展する。情報は加工・修正・粉飾を施され、人々を惑わす。

 なぜ日本は米英ピラミッドの下流にあるのか? それは情報(諜報)機関を持たないゆえである。

アメリカからの情報に依存する日本/『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘
瀬島龍三はソ連のスパイ/『インテリジェンスのない国家は亡びる 国家中央情報局を設置せよ!』佐々淳行

 この国は同胞が北朝鮮に拉致されても目を覚ますことがない。戦後、国家の安全保障をアメリカに委ね、日本はのうのうと経済発展を遂げた。豊かさと引き換えに自国の歴史を見失い、確かな国家観を持つことを忌避し、漫然と平和を強調してきた。「ああ、平和は雄志を蝕む」(『三国志』吉川英治)。

 外側の視点に立たなければ閉ざされた世界を知ることができない。まずは新聞とテレビの情報を疑うことだ。

隷属国家 日本の岐路―今度は中国の天領になるのか?

2016-07-31

河野義行、他


 6冊挫折、1冊読了。

ロボットとは何か 人の心を映す鏡 』石黒浩(講談社現代新書、2009年)/確か茂木健一郎の講演で石黒を知った。視点がユニーク。ところどころ飛ばしながら最後まで読む。

カルチャロミクス 文化をビッグデータで計測する』エレツ エイデン、ジャン=バティースト・ミシェル:阪本芳久訳、高安美佐子解説(草思社、2016年)/要は文化を望遠鏡で見つめる試みである。総花的で主題がつかみにくい。TEDの講演も声が甲高くて耳障りだ。

説き語り日本書史』石川九楊〈いしかわ・きゅうよう〉(新潮選書、2011年)/中ほどまで読む。やはり石川にはゴリゴリの硬い文体が合う。読みやすい分だけ魅力が薄い。

つなみ 被災地の子どもたちの作文集 完全版』森健(文藝春秋、2012年)/子供たちが避難所で書いた原稿がそのまま掲載されている。元は『文藝春秋』臨時増刊号で18万部も売れたという。大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『文藝春秋増刊「つなみ 5年後の子どもたちの作文集」』、『「つなみ」の子どもたち』と続く。

東北ショック・ドクトリン』古川美穂(岩波書店、2015年)/文章に嫌な匂いを感じる。タイトルも読者をミスリードしている。特定の政治的スタンスや思想を感じる。

日本共産党研究 絶対に誤りを認めない政党』産経新聞政治部(産経新聞出版、2016年)/出来はよくないが1404円なので目をつぶる。「朝日新聞は読む気もしないが、かといって産経新聞を読むほど知的に落ちぶれてはいない」というのが我が心情である。左と右を代表する新聞に共通するのは「拙さ」である。朝日の慰安婦問題捏造発覚以降、毎日やローカル紙は完全に左旋回している。読売は中身がないし、日経はアメリカ万歳だ。つまり日本にはまともな新聞がない。日本共産党が秘めている破壊活動に警鐘を鳴らすのは結構だと思うが、角度が浅い。4分の3ほど読んだ。

 113冊目『「疑惑」は晴れようとも 松本サリン事件の犯人とされた私』河野義行(文藝春秋、1995年/文春文庫、2001年)/「必読書リスト」のチェックを行っている。再読に堪えないものはどんどん削除していくつもりだ。報道被害を知る上で絶対に欠かすことのできない一冊である。それにも増して市井にこれほどの人物がいることに驚く。常識とはバランス感覚なのだろう。『妻よ! わが愛と希望と闘いの日々』(潮出版社、1998年)もおすすめである。

三枝充悳、黄文雄、三上修、他


 18冊挫折、3冊読了。

身近な鳥の生活図鑑』三上修(ちくま新書、2015年)/3分の1ほど読む。身近な鳥は30種類ほどもいるという。

ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯』クレア・キップス:梨木香歩〈なしき・かほ〉訳(文藝春秋、2010年/文春文庫、2015年/大久保康雄訳、小学館ライブラリー、1994年『小雀物語』の新訳)/著者は第二次世界大戦中に飛べない子スズメを拾う。クラレンスと名づけられたスズメはすくすくと育ち、やがてキップス夫人のピアノに合わせて歌うようになる。その芸は人々の前で行われ、喝采を浴びた。文章に澱(よど)みが感じられるのは一気に書いていないためか。

だから日本は世界から尊敬される』マンリオ・カデロ(小学館新書、2014年)/マンリオ・カデロはサンマリノ共和国の駐日大使である。天皇陛下の美しいエピソードを紹介している。クリスチャンなのだが神道にぞっこんで絶賛している。

「子供を殺してください」という親たち』押川剛〈おしかわ・たけし〉(新潮文庫、2015年)

インドとイギリス』吉岡昭彦(岩波新書、1975年)

東インド会社 巨大商業資本の盛衰』浅田實(講談社現代新書、1989年)

オランダ東インド会社』永積昭(講談社学術文庫、2000年)

ウイルスは生きている』中屋敷均(講談社現代新書、2016年)/以上5冊は暑さのせいか、文章が全く頭に入らず。

なぜ人はキスをするのか?』シェリル・カーシェンバウム:沼尻由起子訳(河出書房新社、2011年)/ダメ本。文章を書く仕事に向いていないと思われる。各ページに「キス」という言葉が20回くらい出てくる。構成も内容も悪い。

呼吸整体師が教える 深呼吸のまほう 体の不調が消える、人生が変わる』森田愛子(ワニブックス、2015年)/飛ばし読み。参考にはなる。構成が悪く、体験談や「治る」という薬事法違反の健康食品みたいなムードが漂う。編集者の問題か。

「ラットレース」から抜け出す方法』アラン・ワッツ:竹渕智子訳(サンガ、2014年/めるくまーる、1991年『タブーの書』改訂版)/スタイルが合わない。アラン・ワッツは1960年代のカウンター・カルチャーにおいて、若者たちのカリスマ的リーダーであったというから、ややニューエイジ絡みの可能性もある。引用はされていないのだが巻末の推薦文献にクリシュナムルティの『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー』が入っている。

東洋の呼び声 拡がるサルボダヤ運動』A・T・アリヤラトネ:山下邦明、長井治、林千根訳(はる書房、1990年/新装版、2003年)/『ぼくは13歳 職業、兵士。 あなたが戦争のある村で生まれたら』の鬼丸昌也がサルボダヤ運動を実践しているようだ。スリランカなので社会参画仏教と関係があるのかと思って読んでみたが外れた。仏教の精神に基づく農村開発運動である。

ブッダのユーモア活性術 役立つ初期仏教法話8』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2008年)/初期仏教法話シリーズを読んできたが初めて挫ける。前置きが長過ぎて読む気が失せた。宗教性よりも出版事業に重きを置いているのではないか?

ブッダの瞑想法 ヴィパッサナー瞑想の理論と実践』地橋秀雄〈ちはし・ひでお〉(春秋社、2006年)/良書といってよいと思う。「サティ(気づき)を入れる」との表現がよい。ただし古い体質から脱し切れていない印象を受けた。視点の高さも感じられない。

無の探求「中国禅」 仏教の思想7』柳田聖山〈やなぎだ・せいざん〉、梅原猛(角川書店、1969年/角川文庫ソフィア、1997年)/読む気の起こらない文章だ。

不安と欣求「中国浄土」 仏教の思想8』塚本善隆〈つかもと・ぜんりゅう〉、梅原猛(角川書店、1968年/角川文庫ソフィア、1997年)/出来が悪い。シリーズ7以降の失速は目に余るものがある。

生命の海「空海」 仏教の思想9』宮坂宥勝〈みやさか・ゆうしょう〉、梅原猛(角川書店、1968年/角川文庫ソフィア、1996年)/これも期待外れ。空海の飛躍が描けていない。

 110冊目『スズメ つかず・はなれず・二千年』三上修(岩波科学ライブラリー、2013年)/私がスズメの巣を発見できるようになったのは昨年のことだ。電信柱の変圧器を支える架台の鋼材にあった。スズメは何と言っても声と姿がよい。一度でいいから手に乗せてみたいものだ。スズメの数はかなり減少しているそうだ。

 111冊目『世界が憧れる 天皇のいる日本』黄文雄〈コウ・ブンユウ〉(徳間書店、2014年)/小林よしのり作『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』の次に読むのがよい。著者は台湾出身の評論家である。日本と台湾で活動している。親日・反共の旗幟を鮮明にしているため誤解されやすいが、想像以上にしっかりした内容で驚いた。

 112冊目『初期仏教の思想(中)』『初期仏教の思想(下)』三枝充悳〈さいぐさ・みつよし〉(レグルス文庫、1995年)/下巻は半分以上、飛ばし読みしたのでカウントしないでおく。三枝の研究ノートといってよい。大量のテキストが引用されている。推し進められた思索は称賛に値するが、やはり悟りの輝きは見られない。その意味で「悟りとは」の前に読んでおくと理解がより一層進むことだろう。