2012-06-25

貿易黒字は失業を輸出していることに等しい/『藤巻健史の実践・金融マーケット集中講義』藤巻健史


◎ビッグマック指数の嘘
◎貿易黒字は失業を輸出していることに等しい

 この数字が大きいとはどういうことかというと、失業の輸出をしているということですよね。分かります? 例えばアメリカにどんどんどんどん自動車を輸出している。アメリカの自動車工場が閉鎖されてしまう。アメリカで失業者が増加する。そういうときにもっと円安にしろと言っちゃまずいんです。おとなしくしていなくてはいけない。ただでさえ多く輸出しているのに「もっと円安にしろ」って言っちゃいけないんです。
 ところが現在は、モノ+サービスの黒字が減ってきているわけです。今、日本の経常収支が大きいというのは利息と配当収入なのです。これは別に失業を輸出しているわけでもないし、もっと悪い言葉で言えば労働搾取をしているわけでもないですね。こういう状態の時は円安にしろと主張してもおかしくないと私は思います。モノ+サービスの黒字が大きい時には、大声で円安にしろって言ってはいけないんですが、今は状況が昔とは違うんです。

【『藤巻健史の実践・金融マーケット集中講義』藤巻健史〈ふじまき・たけし〉(光文社新書、2003年)】

 経済活動の本質は交換である。投資におけるトレードとプロスポーツ選手のトレードは共に交換を意味する。ところが資本主義経済は否応(いやおう)なく資本の獲得が目的化するため、あらゆるマーケットで搾取が行われる。奪ったモン勝ちというのが資本主義原則であろう。これを「利益」と名づける。

 社会が高度に情報化されると自由競争という前提は崩壊する。広告によって消費行動がコントロールされるためだ。衣食住の心配がなくなると人は刺激を求め始める。広告会社は消費を浪費へと誘導する。

 アイゼンハワー大統領は、記者会見で、後退を防ぐために、国民はなにをすべきかを質問されたことがあったが、そのときの会話のやりとりは次のようである。
 答「買うことだ」問「なにを買うのですか」答「どんなものでも」

【『浪費をつくり出す人々 パッカード著作集3』ヴァンス・パッカード:南博、石川弘義訳(ダイヤモンド社、1961年)】

 大統領が発した二言は権力者の本音をあらわしたものだ。

「2014年までに米国の輸出を倍増し、国内の雇用を増加する」とオバマ大統領は公約した。これに伴いRBS証券の西岡純子チーフエコノミストは「米輸出の増減を世界経済成長と為替相場に要因分解すると、今後5年間に必要なドル相場の下落は、対円では2010年に1ドル=84円、14年には70円になる」とと推計している(Bloomberg 2010年2月10日)。

 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の目的はアメリカの失業を日本へ輸出することだ。そしてゆうちょマネーを始めとする日本の資産が太平洋を渡り始める。資本主義の暴力性が窺えよう。

◎自由貿易協定に脅かされるコロンビアとペルー
◎目撃された人々 26

藤巻健史の実践・金融マーケット集中講義 (光文社新書)

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