2012-06-07

SFの巨匠レイ・ブラッドベリ氏が死去、91歳


 SF小説の古典「華氏451度(Fahrenheit 451)」などで知られる米SF作家レイ・ブラッドベリ(Ray Bradbury)氏が5日、米ロサンゼルス(Los Angeles)で死去した。91歳だった。

 同氏の作品を出版していた米出版社ハーパーコリンズ(HarperCollins)によると、ブラッドベリ氏は長く闘病生活を送っていたという。病名は明らかにされていない。

 SF界の最も偉大な巨匠の1人とされるブラッドベリ氏死去の報に、知人やファンから多数の弔意が寄せられている。

 バラク・オバマ(Barack Obama)大統領も「彼の物語を作る才能は、われわれの文化の形を変え、わたしたちの世界を広げた」という追悼コメントを発表した。「それだけでなくレイは、想像力というものは理解を深め、変化をもたらし、わたしたちの最も貴重な価値観を表現する手段になり得ることも知っていた」と述べ、ブラッドベリ氏の死去を悼んだ。

 ブラッドベリ氏の代表作とも言える「華氏451度」(1953年)は、第二次大戦後の米国社会の不安を反映した作品で、米ソ冷戦の中、危険な未来の物語を通して全体主義国家における検閲や思想統制の邪悪さに警鐘を鳴らした。この小説を映画化したフランソワ・トリュフォー(Francois Truffaut)監督の『華氏451』(1966年)も世界で多くの観客を得た。

 ブラッドベリ氏は2000年の80歳の誕生日に行われたインタビューで、「人生で一番楽しいことは、毎朝、目が覚めたらすぐにタイプライターに向かうことだ。いつも新しいアイデアがわいてくるからね」と話している。また「毎日、12歳の時と同じ気分で過ごしているよ」と語っている。

 ブラッドベリ氏が生涯に記した著作は、火星の植民地化を試みた人類の野望が思わぬ結果をもたらす「火星年代記(The Martian Chronicles)」(1950年)など小説約50編、短編約600編に上る。

 複数の短編から成る「火星年代記」は、書評家から近未来を舞台にした倫理観の物語として高く評価され、ブラッドベリ氏に世界的な名声をもたらした。

 ブラッドベリ氏以前のSF小説といえば、大衆向け雑誌に掲載されることが多かった。SF小説を文学の主流に持ち込んだのはブラッドベリ氏の貢献が大きい。ブラッドベリ氏の作品の販売数は800万部を超え、36の言語に翻訳されている。

 ブラッドベリ氏は1920年8月22日、米イリノイ(Illinois)州生まれ。2003年に死去した妻のマーガリート(Marguerite)さんとの間に4人の娘が生まれ、8人の孫がいる。

AFP 2012-06-07

華氏451度 (ハヤカワ文庫SF) 火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)  とうに夜半を過ぎて (河出文庫) 10月はたそがれの国 (創元SF文庫)

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◎本のない未来社会を描いて、現代をあぶり出す見事な風刺/『華氏451度』レイ・ブラッドベリ

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