2014-05-25

検察庁と国税庁という二大権力/『徴税権力 国税庁の研究』落合博実


「国税は“経済警察”だ。大蔵省から分離すべきだ」
 金丸事件の忌まわしい記憶から、自民党の政治家は国税を恐れた。自民党からの圧力を弱めるため、新聞を味方につけようと思ったのだろう。大蔵省幹部の一人はわざわざ私を食事に誘い、4時間にわたって分離反対論をぶったあと、こう叫んだ。
「国税庁を切り離せというのは金丸事件の意趣返しなんだ」
 同じ年、事件当時、国税庁次長だった瀧川(哲男)は鈴木宗男から忘れられない一言を浴びせられている。瀧川は国税庁を退任後、沖縄開発庁振興局長に転出していたが、その後、事務次官在任中に鈴木宗男が長官として乗り込んできた。経世会に入り、次第に政治力を増していた鈴木から瀧川はこう声をかけられたという。
「カネさん(金丸)をやったのはお前だろう」
 鈴木は金丸子飼いの政治家の一人だった。

【『徴税権力 国税庁の研究』落合博実(文藝春秋、2006年/文春文庫、2009年)】

乱脈経理 創価学会 VS. 国税庁の暗闘ドキュメント』(矢野絢也)で引用されていた一冊。第一章の「金丸信摘発の舞台裏」が出色。その後明らかにトーンダウン。最終章の「国税対創価学会」も尻すぼみの感が拭えない。

 政治とカネの問題はロッキード事件(1976年)に始まり、リクルート事件(1988年)で検察は正義の味方というポジションを確立した。その後、皇民党事件(1987年)~東京佐川急便事件(1992年)、KSD事件(1996年)と続く。

 いずれも疑獄の要素が濃厚で特定の政治家を狙い撃ちにしているのは明らかだろう。どう考えてもすべての事件が検察の発意でなされたものとは考えにくい。何らかの形で米国の意志が関与していると見れば筋が通る。

 東京地検特捜部の前身は検察庁に設けられた「隠匿退蔵物資事件捜査部」である。「隠匿退蔵物資事件捜査部は、戦後隠された旧日本軍の軍需物資をGHQ(米国)が収奪するために作られた組織である」(犯罪の歴史-東京地検特捜部の犯罪)。


 検察は数々の横暴を犯してきた。袴田事件(1966年)、村木事件(障害者郵便制度悪用事件/2009年)、そして今なお有罪とされている高知白バイ事件(2007年)などが広く知られる。検察が数々の冤罪をでっち上げても取り調べ可視化の議論が本格化する様子はない。きっと政治家にとっても都合がいいのだろう。

 検察と双璧をなす権力が国税庁である。


 税の世界は我々素人が考えるほど厳密なものではない。そもそも法自体が解釈される以上、人によって判断が異なるのは当然だ。

 政治とは利益調整の技術を意味する。ある利益と別の利益がぶつかるところに疑獄が生まれるのだろう。すべての情報が開示されることはあり得ない。これが民主主義の機能を阻害する最大の要因だ。この国で叫ばれる国益とは米国の利益であることが多い。

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