2014-07-21

信用貨幣と複式簿記/『マネーの正体 金融資産を守るためにわれわれが知っておくべきこと』吉田繁治


「腐敗した銀行制度」カナダ12歳の少女による講演
30分で判る 経済の仕組み
「Money As Debt」(負債としてのお金)
武田邦彦『現代のコペルニクス』 日本の重大問題(2)国の借金
『サヨナラ!操作された「お金と民主主義」 なるほど!「マネーの構造」がよーく分かった』天野統康

 ・信用貨幣と複式簿記

『〈借金人間〉製造工場 “負債"の政治経済学』マウリツィオ・ラッツァラート
・『紙の約束 マネー、債務、新世界秩序』フィリップ・コガン

株式の資本主義を作った複式簿記

 金属貨幣から離脱した信用貨幣(紙幣)は、株として資本を集めて使う資本主義における(貸借関係を記録する)複式簿記のような大きな発明です。複式簿記も、14世紀から15世紀にベネチア商人の帳簿から生まれています。資本主義は【信用による資本調達の制度】と言っていいものです。信用貨幣と資本主義の複式簿記の発生は、ベネチアで同時でした。

【『マネーの正体 金融資産を守るためにわれわれが知っておくべきこと』吉田繁治〈よしだ・しげはる〉(ビジネス社、2012年)以下同】

 現金の流れだけを追うのが単式簿記(家計簿や小遣い帳)で、複式簿記は貸方・借方というバランスシート方式で資産は負債+資本と必ず一致する。このため複式簿記の方がインチキをしにくい。実は初心者用の複式簿記本しか読んでいないので、その程度しか理解できておらず(涙)。それでも資本主義が借金で回っている事実がよく見えてくる。

ベネチアの複式簿記の記録法によって証券と株が発生

 負債を示す証券と株式は複式簿記から生まれています。複式簿記は、会社が所有する資産を左側に、負債と資本を右側に書きます。実感からは変ですが「資産=負債(簿記の基本)」という構造をもつものです。
 資本主義をつくった株式は、出資した株主にとっては資本という資産です。
 発行した会社にとっては、株主に対し、事業を行った結果の利益を配当する義務がある負債です。
 資本は会社が預かってはいますが会社のものではありません。株主が所有権をもちます。
 株が譲渡可能になって、売買の株式市場ができた理由は、会社の、1.資産・負債の対照構造(バランス・シート)と、2.事業の結果(損益計算書)を真正に公開するということからです。
 株主が、株券という証券を受け取って資本(マネー)を出すのは、銀行預金よりは高い利益配当があるだろうという会社への将来信用からです。こうした「信用」が資本主義をつくったものです。金細工師のバランス・シートに、信用(物的には空洞です)から生まれた株式資本主義の原型が見えます。金利は、貸付金の、未来の不確実性(リスク)をカバーするために生まれたものです。

「資産=負債」という原理に資本主義の本質がある。眼から鱗が50枚くらい落ちたよ。そして株式会社が株主のものであることもよく理解できよう。株主が会社に投資し、会社が事業に投資をする。投資→利益→投資というサイクルが企業活動に運命づけられているのだ。

 現在、主要国の金利が下がっている。その先頭を走っているのが我が日本だ。先進国でいち早くデフレに陥ったためだ。ゼロ金利でもデフレを脱却できないため量的緩和まで行っている。アメリカのQE3(第三次量的緩和)は年内に終了する予定で、FRBは既にテーパリング(量的緩和の縮小)を開始した。FRBが市場に放出した資金を回収すれば、当然のようにドル高圧力がかかる。そこで思いも寄らぬ事態が待ち受けていることだろう。

 金利は「貨幣の時間的価値と信用リスクの対価としての性質を有するもの」(Wikipedia)と考えられているが、それにしても不思議である。マネーの将来価値が低くなることを織り込んでいるわけだから。マネーは金利によって増殖し、増刷されることで価値を下げる。世界各国がインフレターゲット政策を掲げ、健全なインフレ率(2~3%)を設定するのも、金利の為せる業(わざ)なのだろう。

 経済政策が上手くゆかないのはマネーが国境を軽々と超えるためだ。インターネットが普及した現在では一般人の資産すら海外へ移動することはたやすい。マネーはリターンを求めてリスクに向かいバブルを形成し、バブルが弾けるや否や安全な場所へ回避する。逃げ足の速い投機マネーが世界経済を混乱へと招く。

 サブプライム・ショック(2007年)、リーマン・ショック(2008年)を経て、資本主義崩壊が囁かれ始めた。新しい形の世界はまったく見えてこない。だが、やがて人類は必ずカネ以外の価値を見つけることだろう。

マネーの正体

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