2015-07-25

テロに敗れつつあるアメリカ/『グアンタナモ、僕達が見た真実』マイケル・ウィンターボトム監督


 2006年に制作されたイギリス映画。日本公開は2007年。

 実話である。しかも本人たちのインタビューが随所に挿入されている。パキスタン系イギリス人の若者が結婚式のためにパキスタンへ里帰りする。彼は3人の友人を招待し、4人でパキスタンへ向かう。彼らは隣国のアフガニスタンが米軍の攻撃によって荒廃していることに心を痛める。せっかくここまで来たのだから、ということで彼らはアフガニスタンにまで足を伸ばし、難民支援のボランティアを行う。タリバンの戦闘に巻き込まれ、その後彼らは米軍に引き渡され、グアンタナモ収容所(※グァンタナモとの表記もあり)へ送られる。拘束期間は2年半に及んだ。


 私はキューバ国内にアメリカの飛び地があったことを知らなかった。元々はキューバやハイチからの難民を受け入れるためのキャンプであったらしい(1970年代)。9.11テロ以降はテロリスト容疑をかけられた各国の人々が収容されている。しかも裁判がない上、国内法をかわす目的で国外に設けられ、ジュネーヴ条約違反を回避するために捕虜ではなく犯罪者と位置づけている。そう。彼ら米軍こそが無法者なのだ。

 杜撰(ずさん)な取り調べ、でっち上げ、そして嘘。ある時は「イギリス大使館の外交官」を詐称する人物が現れる。もちろん米兵かCIAである。女性による取り調べも行われるが、最初から最後までテロリストと決めつけているだけだ。

 私はテロに敗れつつあるアメリカを確かに見た。日本の官僚主義とまったく同じ世界だ。事実はどうあれ結果だけが求められる。米兵の無能が犯罪に結びつく。こうした行為が強靭な復讐心を醸成させ、世界の至るところでアメリカ人が殺されるような目に遭ってもおかしくない。グアンタナモ収容所でアメリカは正義の旗を下ろした。

 そして主人公たち3人がイギリスに帰国した2004年、今度はイラクのアブグレイブ刑務所で米兵による捕虜虐待が発覚するのである。

 映画作品としてではなく、現実世界で起こった事実として見るべきだ。「世界の警察」を自認してきたアメリカが犯罪者に転落した瞬間を我々は目撃する。オバマ大統領はシリア問題に関するテレビ演説で「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」と歴史に残るであろう発言をした(2013年9月10日)。ま、国防予算削減という背景もさることながら、米軍が世界各地で犯罪を冒してきた事実を思えば、犯罪者宣言とも思える。

 アシフは語る。「人生が変わってしまった。考え方、世の中の見方も……。この世界はいいところじゃない」。

 正義を叫ぶ者を疑え。彼らこそが世界に混乱を起こす張本人ゆえに。



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