2015-06-06

鍵山秀三郎、藤原正彦、吉本貞昭、他


 1冊挫折、3冊読了。

宗教vs.国家 フランス〈政教分離〉と市民の誕生』工藤庸子〈くどう・ようこ〉(講談社現代新書、2007年)/23ページで、ヴィクトル・ユゴーの葬儀が無宗教で行われたことを持ち上げ、靖国神社を対照的な位置に置いている。この正味3行に著者の心性・思想性・政治性が露呈する。「無宗教は進歩である」との錯覚を抱いているのだろう。マルクス主義的な匂いを感じた時点で放り投げた。

 61冊目『世界が語る大東亜戦争と東京裁判 アジア・西欧諸国の指導者・識者たちの名言集』吉本貞昭(ハート出版、2012年)/大東亜戦争を賛嘆するアジアの人々の証言が多数収められている。渡辺京二が「滅んだ」とした古き日本の文明は大東亜戦争まで命脈を保っていたように思う。すべての日本人が読むべき一書であると感ずるが敢えて苦言を述べておく。序盤において主語と述語が離れすぎていて文意がわかりにくくなっている。「こうして」「こうした中」の多用が目立つ。そして最も致命的なのは証言がいつどこで行われたのかが不明だ。しかしながら高校の非常勤講師を勤めながら本書を書き上げたのは見事な仕事である。どの証言を読んでも感動を抑えることができなかった。東條英機の孫娘が一文を寄せている。

 62冊目『日本人の誇り』藤原正彦(文春新書、2011年)/これもオススメ。2冊とも「日本の近代史を学ぶ」に追加した。私が保守史観に目覚めた上で最も大きい影響を受けたのが藤原であった。初期のエッセイ集を読んだ際に「この愛国心は理解できる」と感じたのが最初であった。藤原はより多くの日本人に読んでもらうべくわかりやすい文章で綴っており、彼本来の透明で硬質な文体ではない。数学者が本書を著したところに我が国の悲劇的情況がある。本来であれば歴史学者や宗教者が行うべき仕事である。ただし分野の違う藤原が放った言論は架橋となって多くの人々を東京裁判史観の迷妄から解き放ったことだろう。

 63冊目『あとからくる君たちへ伝えたいこと』鍵山秀三郎〈かぎやま・ひでさぶろう〉(致知出版社、2011年)/中学で行った講演二題を収録。twitterでも書いたのだがGLAの高橋佳子〈たかはし・けいこ〉の名前を挙げているのに驚いた。鍵山が説く道徳にも私は「失われた日本の文明」を感じてならない。掃除という凡事を徹底することで東証一部上場のイエローハットを築いた人物だ。成功者というよりも行動する男として私は評価する。

2015-06-05

南京虐殺否定を無断加筆 ベストセラーの翻訳者(藤田裕行)


 米ニューヨーク・タイムズ紙の元東京支局長が、ベストセラーの自著「英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄」(祥伝社新書)で、日本軍による「『南京大虐殺』はなかった」と主張した部分は、著者に無断で翻訳者が書き加えていたことが8日明らかになった。

 英国人の著者ヘンリー・ストークス氏は共同通信に「後から付け加えられた。修正する必要がある」と述べた。翻訳者の藤田裕行氏は加筆を認め「2人の間で解釈に違いがあると思う。誤解が生じたとすれば私に責任がある」と語った。

 同書はストークス氏が、第2次大戦はアジア諸国を欧米の植民地支配から解放する戦争だったと主張する内容。「歴史の事実として『南京大虐殺』は、なかった。それは、中華民国政府が捏造したプロパガンダだった」と記述している。

 だがストークス氏は「そうは言えない。(この文章は)私のものでない」と言明。「大虐殺」より「事件」という表現が的確とした上で「非常に恐ろしい事件が起きたかと問われればイエスだ」と述べた。

 藤田氏は「『南京大虐殺』とかぎ括弧付きで表記したのは、30万人が殺害され2万人がレイプされたという、いわゆる『大虐殺』はなかったという趣旨だ」と説明した。

 だが同書中にその説明はなく、ストークス氏は「わけの分からない釈明だ」と批判した。

 同書は昨年12月に発売、約10万部が売れた。ストークス氏単独の著書という体裁だが、大部分は同氏とのインタビューを基に藤田氏が日本語で書き下ろしたという。藤田氏は、日本の戦争責任を否定する立場。ストークス氏に同書の詳細な内容を説明しておらず、日本語を十分に読めないストークス氏は、取材を受けるまで問題の部分を承知していなかった。

 関係者によると、インタビューの録音テープを文書化したスタッフの1人は、南京大虐殺や従軍慰安婦に関するストークス氏の発言が「文脈と異なる形で引用され故意に無視された」として辞職した。

【共同通信 2014-05-08】

英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄(祥伝社新書)




 コメントで著者が共同通信社の記事を否定していることを知った。

『英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄』に関する各社報道について(PDF)

20歳女性を性奴隷に、男女6人を起訴 フランス


 フランスで22日、女性(20)を1か月以上にわたって監禁し、性奴隷としてレイプや暴行を加えたうえ獣姦などを強いていたとして、男女6人が起訴された。

 被害女性は精神上の問題を抱えており、北部ベルダン(Verdun)で監禁されていたとされる。地元メディアによると、女性は銀行のキャッシュカードを返してもらうとの口実で知り合いの元教師と会うことを被告らに認めさせ、女性の状況に気付いたこの元教師が通報して事件が発覚した。

 被告側弁護士によると、強姦と野蛮行為の罪で起訴されたのは19~27歳の男3人と女3人。一部は監禁罪でも起訴されている。

 関係筋によると、女性は被告のうち女2人と青少年労働者向けのユースホステルで知り合い、女らの自宅に誘われて被害に遭った。監禁中はこの女2人の友人たちが特に激しく女性を虐待し、殴る、やけどを負わせる、頭を剃るなどのほか、凍った川に飛び込ませたりキャットフードを食べさせたりしたうえ、獣姦を強要したという。

AFP 2015-03-23

仏軍の性暴力、放置か=中央アフリカで子供犠牲、調査へ-国連


【ニューヨーク時事】政情不安が続く中央アフリカで、治安回復のために派遣されたフランス軍が現地の複数の子供に性的暴力を働いた疑いが持たれていることに関し、国連が問題を把握していたにもかかわらず対応を怠った可能性があるとして、潘基文事務総長は3日、外部チームによる独立した調査を行うと発表した。

 数日内に調査の責任者が発表される。中央アフリカに展開していた仏兵が2013年12月~14年6月、避難民施設で複数の子供に対し、食料を与える見返りに性行為を強要した疑いがあり、仏当局は兵士14人を捜査している。

 中央アフリカには国連の平和維持活動(PKO)部隊も派遣されており、国連に性暴力に関する報告が上がっていたにもかかわらず、適切に対処しなかった疑いが強まっている。

時事通信 2015-06-04

2015-06-02

渡辺京二、関野通夫、本川達雄、佐藤勝彦、他


 1冊挫折、4冊読了。

ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理』バートン・マルキール:井手正介訳(日本経済新聞出版社、2011年)/第10版。第9版は文庫化されている。インデックスファンドを勧めた古典。ランダム・ウォークとは株価予測は不可能であるとする理論だ。酔っ払いの千鳥足と同様で「次の一歩」がどちらに進むかわからない。が、しかしである。我々チャーチストに言わせれば「どちらに進もうが歩幅を超えることはない」。高っ調子が鼻について読了できず。

 57冊目『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』佐藤勝彦(ブルーバックス、2010年)/良書。教科書本。佐藤勝彦はインレーション宇宙論の提唱者である。さすがに説明能力が高く、しかもわかりやすい。「人間原理」という言葉を初めて知った。これはオススメ。

 58冊目『「長生き」が地球を滅ぼす 現代人の時間とエネルギー』本川達雄(阪急コミュニケーションズ、2006年/文芸社文庫、2012年/1996年、NHKライブラリー『時間 生物の視点とヒトの生き方』改題)/これまた良書。「生物では、時間の早さはエネルギー消費量で変わってくる。エネルギーを使えばつかうほど、時間が早く進むのである」。現代の日本人はヒトとしての標準代謝率の40倍近いエネルギーを使っているそうだ。環境問題も突き詰めれば石油と電力の消費に辿り着く。個人的には労働時間を短くすべきだと考える。一切の乗り物を禁止する祝日があってもよい。

 59冊目『日本人を狂わせた洗脳工作 いまなお続く占領軍の心理作戦』関野通夫(自由社ブックレット、2015年)/資料的価値のある一冊。読み物としては今ひとつだ。江藤淳が『閉された言語空間 占領軍の検閲と戦後日本』で明らかにした「ウォー・ギルト・インフォーメーション・プログラム」(WGIP)の具体的な証拠を示す。序文で加瀬英明が「ウオア・ギルト・インフォメーション・プログラム」と表記しているのが解せない。

 60冊目『逝きし世の面影』渡辺京二(平凡社ライブラリー、2005年/1998年、葦書房『逝きし世の面影 日本近代素描 I』改題)/ずっと気になっていた本だ。やっと読んだ。600ページあるが3日で読み終えた。平川祐弘の解説によれば渡辺は「在野の思想史家」であるという。野の広大さを思い知った。と同時に学位や肩書の不毛に思い至った。日本の近代史本を数十冊読んできて本書に巡り会えた僥倖は何ものにも代えがたい。江戸末期に来日した外国人の眼を通して「失われた日本の文明」に光を当てる。横山俊夫の英語著書を徹底的に批判しているが決して陰湿なものではない。太田雄三の『ラフカディオ・ハーン 虚像と実像』に対しても同様だ。渡辺は見事なまでに文献を引用し、列挙し、両論を併記しながら、まぶしいばかりの輝きを放っていた日本を鮮やかに切り取る。ページを繰るごとに喉の奥からせり上がってくる何かがある。私の内側に流れる日本人の血が熱くなる。だがその日本は文明開化と引き換えに滅び去った。文化は受け継がれたとしても文明は死ぬと渡辺は言い切る。江戸時代の日本人は決して「抑圧された民」ではなかった。自由に生き生きと生を謳歌していた。貧しくても食べることには困らなかった。欧米人は驚愕した。乞食が殆どいない上、子供という子供は丸々と肉付きがよかった。自然は美しく、人々は礼儀正しく、朗らかで親切だった。何をどう書いたところで尽きることはない。第十三章の『信仰と祭』はまったく新しい知見を与えてくれた。神道は民俗的祭政を「お祭り」にまで昇華したのだ。世俗化というよりは世俗そのものといってよい。これを肯定的な視点で捉えたところに渡辺のユニークさがある。ま、今年の暫定1位だ。