2018-05-20

ポスト・ドル体制の青写真/『ドル消滅 国際通貨制度の崩壊は始まっている!』ジェームズ・リカーズ


『円高円安でわかる世界のお金の大原則』岩本沙弓
『新・マネー敗戦 ――ドル暴落後の日本』岩本沙弓
『21世紀型大恐慌 「アメリカ型経済システム」が変わるとき』山崎養世
『超帝国主義国家アメリカの内幕』マイケル・ハドソン
『資本主義の終焉と歴史の危機』水野和夫
『通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!』ジェームズ・リカーズ

 ・ポスト・ドル体制の青写真

『金価格は6倍になる いますぐ金を買いなさい』ジェームズ・リカーズ
『ペトロダラー戦争 イラク戦争の秘密、そしてドルとエネルギーの未来』ウィリアム・R・クラーク

必読書リスト その二

 本書はドルの終焉(しゅうえん)について論じる本だ。その延長線上で、国際通貨制度の崩壊の可能性についても論じることになる。なぜなら、ドルに対する信認が失われた場合、他のどの通貨も世界の準備通貨というドルの地位を引き継ぐ用意はできていないからだ。ドルは基軸である。ドルと国際通貨制度は表裏一体なので、ドルが崩壊したら、それとともに国際通貨制度全体が崩壊する。このダブル崩壊は恐ろしい可能性だが、これから説明していく理由により、ますます避けがたくなっているように見える。

【『ドル消滅 国際通貨制度の崩壊は始まっている!』ジェームズ・リカーズ:藤井清美訳(朝日新聞出版、2015年)以下同】

 SDR(特別引出権)の意味を初めて理解できた。「FRBがドルを捨てる方向に動いている」というのが真意である。SDRは事実上、世界通貨であり、ゆくゆくはSDR建てでアメリカの大型株が発行される可能性を示唆する。ゴールドの価値は不変であり、価格の上下はドルの価値が動いているに過ぎない、との指摘に目から鱗が落ちる。アベノミクスについても触れており、アメリカ経済の今後を日本の金融政策(金融緩和)が占うという。基本的には緩和マネーが資産バブルを形成し、首が回らなくなるという見立てである。ドル基軸通貨体制崩壊後に関しては三つのシナリオが描かれているが、ゴールドを裏付けとするSDR基軸通貨が実現するような気がする。デフレという化け物に紙幣が敗れる日はそう遠くない。

 ドルに対して使われる【崩壊】という言葉が世界の終わりのように響くとき、それは100パーセント実際的な意味を持っている。崩壊とは、簡単に言うと、ドルの未来の購買力に対して市民や中央銀行が信認を失うということだ。その結果として、ドルを持っている者たちは、通常より速いペースで支出したり実物資産を購入したりすることによってドルを手放すことになる。この急激な行動変化は、当初は金利の上昇やインフレ率の上昇、それに資本形成の崩壊を引き起こす、最終的な結果は(1930年代のように)デフレのこともあれば、(1970年代のように)インフレのこともあり、その両方になることもある。

 米10年債の金利がいよいよ3.0%を超えてきた。実際は今までの低金利が異常事態であって、年利が2%であれば国債のリスク・プレミアムはインフレ上昇分と相殺されてしまう。つまりリターンが低すぎて投資家はリスクを取る意味がない。で、なぜ低金利だったかというとFRB(連邦準備理事会)が量的緩和政策(QE)を行い国債を買い漁ってきたためだ。QEが終了すれば金利は当然上がる。

 今年はリーマン・ショックからちょうど10年目に当たる。もはや経済は企業や人々が自然に織りなす営みとは言い難い。人為を過信してマネーを水道の供給みたいに考えている節(ふし)がある。氾濫(はんらん)したマネーが逆流すれば次は津波のような被害が世界を襲うに違いない。リーマン・ショックは100年に一度の金融危機と言われたが、次なる危機は「1000年に一度」となる可能性が高い。

ドル消滅 国際通貨制度の崩壊は始まっている!
ジェームズ・リカーズ
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2018-05-12

武田邦彦「スポーツは無意味」


 sport という語は 19世紀から 20世紀にかけて使用されるようになった英語です。その語源はラテン語の「deportare」です。 この語は、日々の生活から離れること、すなわち、気晴らしをする、休養する、楽しむ、遊ぶなどを意味しました。

第1回 スポーツの語源 « 基礎教育センター活動ブログ

 多分「競争」は資本主義経済の影響なのだろう。「スポーツのルールには何の合理性もない。非合理な制約を設けて競争するのがスポーツで、スポーツそのものに意味はない」との主旨。「非合理な制約を設けて競争する」のは宗教も一緒だ。

2018-05-06

米ドル崩壊のシナリオ/『通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!』ジェームズ・リカーズ


『円高円安でわかる世界のお金の大原則』岩本沙弓
『新・マネー敗戦 ――ドル暴落後の日本』岩本沙弓
『資本主義の終焉と歴史の危機』水野和夫

 ・米ドル崩壊のシナリオ

『ドル消滅 国際通貨制度の崩壊は始まっている!』ジェームズ・リカーズ
『金価格は6倍になる いますぐ金を買いなさい』ジェームズ・リカーズ

 1971年8月15日、穏やかな日曜日の夜、リチャード・ニクソン大統領はアメリカで最も高視聴率を誇っていたテレビ番組の時間に、電波を使って新経済政策を発表した。政府は価格統制を行い、高率の輸入課徴金を課し、ドルと金の交換を停止すると宣言したのである。継続中の通貨戦争によって米ドルに対する信認が打ち砕かれ、アメリカは危機のさなかにあった。思い切った措置が必要だと、大統領は決断していたのである。

【『通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!』ジェームズ・リカーズ:藤井清美訳(朝日新聞出版、2012年)以下同】

「トランプ米大統領は8日の記者会見で、鉄鋼とアルミニウムにそれぞれ25%と10%の関税を課す輸入制限を実施することを正式に発表した。カナダとメキシコを対象外とすることも改めて明らかにした」(ロイター 2018年3月9日)――あとはドル安に誘導すればニクソンショックの再現となる。東京オリンピックの翌年がちょうど半世紀後に当たるから、日中戦争はこのタイミングになるような気がする。もちろん米国債を大量保有している日中を戦わせるシナリオを用意しているのはアメリカだ。序文の続きを紹介しよう。

 今日、われわれは新たな通貨戦争の渦中にあり、ドルに対する信認の危機がふたたび訪れようとしている。危機の影響は、ニクソンが直面したものよりはるかに深刻になるだろう。あれから40年の間にグローバル化が進み、デリバティブ(金融派生商品)やレバレッジ(借り入れを利用する投資)が多用されるようになったことで、金融パニックやその伝播(でんぱ)を抑え込むのはほぼ不可能になっているからだ。
 新しい危機は為替(かわせ)市場で始まって、またたく間に株式や債権やコモディティ(商品)市場に波及するだろう。ドルが崩壊したら、ドル建て金融商品の市場も崩壊する。パニックはまたたく間に世界中に広がるだろう。
 その結果、アメリカ大統領が――それはオバマ大統領かもしれない――電波とサイバー空間を使って、ドルを全面崩壊から救うための大胆な介入計画を発表し、法的権限を行使するだろう。この新しい介入計画には、金本位制への復帰という策まで含まれるかもしれない。もしそうなったら、膨張したマネーサプライ(通貨供給量)を限られた量の金で支えるために、金の価格は現在より劇的に高い水準に設定されるだろう。早くから金に投資していたアメリカ人は、金価格の上昇による棚ぼた利益に対して、公正の名の下に90パーセントの「超過利潤税」を課せられるだろう。現在ニューヨークに保管されているヨーロッパや日本の金は、接収されて「新ドル政策」を支えるために使われるだろう。ヨーロッパや日本は接収された金の代わりに受取書を与えられ、その受取書は以前より大幅に高い新価格で新しいドルと交換できるとされるだろう。
 もう一つの可能性として、大統領は金本位制への復帰は避けて、さまざまな資本規制やIMF(国際通貨基金)のマネー創造機能を使って流動性を供給し、状況を安定させようとするかもしれない。IMFによるこのグローバルな救済は、金との兌換(だかん)性のない古いドルではなく、新たに発行されるSDR(特別引き出し権)と呼ばれるグローバル通貨で行われるだろう。世界は回り続けるだろうが、国際通貨精度はすっかり様変わりするだろう。
 これは荒唐無稽(むけい)な推論ではない。そっくり同じことがかつて起きているのである。紙券通貨が崩壊して、資産の凍結、金の接収、資本規制という措置が取られたことは過去に何度もある。アメリカもこうした措置と無縁ではなかった。それどころか、アメリカは1770年代から1970年代まで、独立戦争、南北戦争、大恐慌、そしてカーター政権時代のハイパーインフレーション(物価暴騰)を経験するなかで、ドル安政策を積極的に推し進めてきた。通貨崩壊が30年余り起きていないという事実は、次の崩壊の機が熟しすぎるほど熟していることを暗に示しているだけだ。単なる推論の所産ではなく、前提条件はすでに整っているのである。

 二度の世界大戦で英ポンドは凋落(ちょうらく)し基軸通貨は米ドルに変わった(1944年)。ブレトン・ウッズ体制はニクソン・ショック(1971年)で終焉を迎え、為替(かわせ)の変動相場制が幕を開ける。それにしても米ドルが現在も基軸通貨の地位を譲っていないのは何とも不思議な話である。兌換(だかん)紙幣は死んだ。金(ゴールド)の裏づけを失ったマネーは物としての価値を消失したが信用情報として生き延びた。

 基軸通貨とは簡単に言えば「石油や武器を買う時に使用できる通貨」のことだ。日本が中東から石油を購入した場合、1万円札で支払えば相手が困るのは誰にでも理解できよう。国家の基盤が弱い国ほど外貨が必要となる。

 イラクのフセイン大統領は原油の決済通貨をドルからユーロに変えたために殺された。「要するに、イラク戦争というのは、イラクにある石油利権を植民地主義敵に囲い込むための戦争だったのではなく、ドルを基軸としてまわっている国際石油市場のルールを守るための戦争だった」(『超マクロ展望 世界経済の真実』水野和夫、萱野稔人)。ルールを決めるのはいつだって強者だ。


 1ドル360円が半分の価値になるまでわずか10年である。1990年代から2000年代初頭にかけてアメリカではITバブルが、続いて住宅バブルが絶頂を迎える(2007年7月)。そして物づくりを放棄して金融工学にうつつを抜かしていた彼の国を襲ったのがリーマン・ショックであった(2008年9月)。10月28日には日経平均が7000円台を割り込んだ。グローバリゼーションは恐慌のスピードを加速する。

 トランプ大統領が唱えるアメリカ・ファーストとは、今まで世界中から物を買ってきたアメリカが「物を売る側」にシフトするとの宣言である。とすればドルが強くなることはあり得ない。しかしながら世界から資金を集める必要があれば株価は釣り上げてくることだろう。更にはアメリカが覇権から一歩退くことで東アジアと中東に混乱が生じるに違いない。

通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!
ジェームズ・リカーズ
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