2012-01-08

物語の本質~青木勇気『「物語」とは何であるか』への応答


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 氏家〈うじけ〉さんのツイートで青木勇気というライターの存在を知った。


 BLOGOSは私の趣味に合わないため殆ど見ることがない。何て言うんでしょうな。インチキ臭い(笑)。多分、編集方針がないためだろう。雑多というよりは、まとまりを欠いているというべきか。

 早速、本人のブログを読んだ。

Write Between The Lines.

 先の記事もそうだがとにかく文章がいい。読んでいて気持ちがよくなってくる。その上、箴言力(コピーライティングのセンス)があるのだから侮れない。

 で、注目に値する記事を発見した。

「物語」とは何であるか

 私の専門分野だ(ニヤリ)。ケチをつけようと思えばどんな角度からもつけることが可能だ(笑)。しかし、私が「物語」に気づいたのは4年前のことである。青木は私より一回り以上も若い。ならば援護射撃をすべきだろう。

 私が「物語」を悟ったのは、上杉隆著『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』を読んだことに始まる。それ以前から「思想とは物語である」という持論があったのだが、上杉を通して「物語を編む」営みに初めて気づいた。

 私は文筆家ではなく古本屋のため、ここはやはり読書の水先案内としておこう。

 その頃、私が吹聴していた「物語論」は、岸田唯幻論の幻想とは違った。世界の構造・結構としての物語性であった。生きることが物語なのではない。我々は物語を生きるのだ。

唯幻論の衝撃/『ものぐさ精神分析』岸田秀

 森達也の『A』はカメラの位置をオウム信者側にしただけで物語を反転させてみせた。

森達也インタビュー

 その意味で私の小さな思いつきが完全な形で表現されたのが、野家啓一〈のえ・けいいち〉著『物語の哲学』であった。

「理想的年代記」は物語を紡げない/『物語の哲学 柳田國男と歴史の発見』野家啓一

 もうね、ぐうの音も出なかったよ。当時は野家啓一が神様に思えたほどだ。きちんと書評を書いていないので一両日中にアップする予定。

 ここからが私の本領を発揮する地点だ。まずは歴史。理想的年代記が物語を紡げないのであれば、物語を編むのは歴史家の仕事となる。つまり歴史トピックの取捨選択に物語性が込められているのだ。ここでわかるように物語性の本質とは「因果関係」(=起承転結)である。

 そこでまず世界史という物語の枠組みを知る必要がある。

世界史は中国世界と地中海世界から誕生した/『世界史の誕生 モンゴルの発展と伝統』岡田英弘

 次に歴史という概念を学ぶ。

読書の昂奮極まれり/『歴史とは何か』E・H・カー
歴史の本質と国民国家/『歴史とはなにか』岡田英弘

 本気で勉強するなら、ここで野家本を再読するのが望ましい。

 で、先ほど申し上げた因果関係を木っ端微塵に粉砕するのがこれ。

歴史が人を生むのか、人が歴史をつくるのか?/『歴史は「べき乗則」で動く 種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学』マーク・ブキャナン

 ここからの急降下はジェットコースター級となる。諸君、振り落とされるなよ(笑)。

 まずは岸田唯幻論を踏まえた上で脳機能を知っておこう。

唯脳論宣言/『唯脳論』養老孟司

 で、「負の物語」ともいうべき迷信・誤信について書かれたのが以下。

怨霊の祟り/『霊はあるか 科学の視点から』安斎育郎
誤った信念は合理性の欠如から生まれる/『人間この信じやすきもの 迷信・誤信はどうして生まれるか』トーマス・ギロビッチ

 人類が創作した最大の物語は「神」であろう。

脳は神秘を好む/『脳はいかにして〈神〉を見るか 宗教体験のブレイン・サイエンス』アンドリュー・ニューバーグ、ユージーン・ダギリ、ヴィンス・ロース

 ここで振り出しに戻って物語を見つめる。

必然という物語/『本当にあった嘘のような話 「偶然の一致」のミステリーを探る』マーティン・プリマー

 次は変化球になってしまうが、「相関関係=因果関係ではない」ことを学ぶのに欠かせない。

相関関係=因果関係ではない/『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン

 医療や製薬会社を取り巻く「業界の物語」と置き換えることも可能だ。

 そろそろ最終コーナーに差し掛かる。

比較トラップ/『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』ダン・アリエリー

 更に加速しよう。ラストスパートだ。

エントロピーを解明したボルツマン/『ユーザーイリュージョン 意識という幻想』トール・ノーレットランダーシュ
視覚の謎を解く一書/『46年目の光 視力を取り戻した男の奇跡の人生』ロバート・カーソン
宗教の原型は確証バイアス/『動物感覚 アニマル・マインドを読み解く』テンプル・グランディン、キャサリン・ジョンソン
『宗教を生みだす本能 進化論からみたヒトと信仰』ニコラス・ウェイド
『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』シャンカール・ヴェダンタム

 これで大体、「物語の本質」は征服できる。あとは止(とど)めの2冊だ。

服従の本質/『服従の心理』スタンレー・ミルグラム
現在をコントロールするものは過去をコントロールする/『一九八四年』ジョージ・オーウェル

 物語の正体は確証バイアスであり、確証バイアスから宗教が生まれた。一言で書いてしまうと身も蓋もないように思えるだろうがそうではない。人間の「錯覚できる能力」が物語を紡ぎ出すのだ。

 ゆえに困難や危機が訪れるたびに「人類の物語」を更新してゆくことが正しい。個人においても同様である。

 ただし真の宗教性に立てば「物語=主役としての自我」から離れることが唯一の道となる。神という創造物は人類にとっての自我も同然であって、それ自体が物語にすぎない。今のところ真の宗教性として認められるのはブッダの初期経典とクリシュナムルティのみである。

 最後に青木の著作を紹介しておく。彼の勁草(けいそう)を思わせる柔らかな感性に期待したい。

梨花、

物語る行為の意味/『物語の哲学』野家啓一
物語
虐待による睡眠障害/『消えたい 虐待された人の生き方から知る心の幸せ』高橋和巳

2 件のコメント:

  1. なるほど!物語という概念なのですね。

    私は、神話を生きるのが人間だと思っていました。

    生滅する表層的な個我ではなく、ユングのいうような普遍的な人類意識を生きられたらと思います。

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  2. 神話といってもいいでしょうね。それが証拠にあらゆる宗教の教祖は神話化されます。これを偶像化と言い換えることも可能です。文字がなかった時代を思えば、物語=歴史のある部族の方が生き残るのに優位であったと考えられます。

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